百合と漫画と光る苔

百合とゲームが好きです

みえるけどみえないもの  ――まご『ともだちマグネット(1)』感想

「とんだ吸った揉んだでしたね」
「その字って合ってる?」
    ――『スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園』

 友情の証明とはどのように行うのだろうか.例えば「自分の一生のお願いを何も言わずに聞いてくれるか」という質問に快諾してくれるってのはどうか.……いや,これは少々極端過ぎる気がする.まるで「自分の代わりに死ねるか」と聞いているみたいで,友情にしては重すぎる可能性は十分に考えられる.どちらかと言えばそれは親友っていうような.ならば親友と友情の境目は.いや,他人と友情のラインはどこに引くのか.そもそも人間関係はそんなに明確なものだったか.

 主人公・沢村真琴は,学校でスマホ使って視聴するほどに幼女向けアニメ「ハッピィ☆バレット」が大好きなぼっちオタク系女子高生.そんな自称キモオタな彼女が,隣の席の読者モデルで人気者なリア充女子高生・松本なつみに懐かれて……という,竹書房まんがライフWIN』で連載している四コマ漫画.

 タイトルにもあるマグネット.そこからも察することができようが,一見すると真琴となつみは正反対に見える.確かにオタとリア充は正反対の存在として描かれがちだし,少なくともこの漫画はそこを出発点に置いているだろう.そしてしかし多くのリア充やオタがそうであるように,人間として根底の部分はそれほど違うわけではない.

 劇中で語られる,なつみが真琴に話しかけるきっかけ.なんだかんだいってやっぱり王道は胸が熱くなる上に,ついでに胸が厚くなって(?)読者モデルにもなったのだから,なつみのルーツの一端を真琴が担っている.真琴はなつみをかつて救っているのだ.それに対して,真琴自身は特に救いを必要としていない.……いや,そう自分に思い込ませている.キモオタである自分はオタではない他人と関わることによって,その人に不快な思いをさせる,と枷をかけた.

 真琴のこのスタンスは,おそらく最低でも2年前から変わっていないだろう.ただし,(現代のオタクらしく)自分の外の領域にはほとんど干渉しないが,縄張りに入ってくるものには非常な勢いで牙をむく.それにより極めて自己中心的に,期せずしてなつみを助けるという結果が,周りに流されないという強さを共有し,空気を読まないレベルにさえ見えるほどのなつみの弱さを肯定したのだ.それ故に真琴となつみの根底は共通している.ただ,その表現方法はまるで異なる.真琴はそのマイペースさを「他人を遠ざけること」に用い,なつみは「自分が好きな様に動くこと」に充てたのだった.

 さて,友情の証明とは.少なくとも,男女間における「恋人関係」というのは友情に比べたら明確だろう.基本的に,互いに「付き合っている」という共通認識があれば成り立つ.延長すれば友情は,互いに「友達である」という共通認識で構成されるはずだ.それならば確かに,最初の方の真琴となつみは友達ではない.それ故に真琴はなつみに「友達かどうか」の確認を求めようとするのだ.

 そして「友達であるかどうかの確認を求める」というプロセス自体が既に友情的である.更に言えば,見かけ上「他人」という立場に留まっている状態だが,その好感度は「他人」という領域を超えて「友人」まで過熱されていくさまは,あたかも友情百合のようではないか.百合厨な方なら,「ファッションに明るい友人に連れられて美容院に一緒に行く」という流れに既視感を覚えるかもしれない.……つまりこの漫画が後々ガチ百合漫画となることに何の違和感も異論もないな!

 別に根拠がないわけじゃない.仲間と約束があるので帰る,と言った真琴に,なつみが「カレシかー?」と軽く聞くシーン.真琴はこれを強く否定してしまい,少々気まずくなる転換シーンではあるが,これはアレだ.真琴が心の底で「カレシなんているわけない,本当はあなたのことが好きなんだから」みたいな意識を無自覚に持っているからに違いないよ,うん.……期待だけは持っておく.持つだけならばただだからね!

 あと.悪いことは言わないから,0は1か2のどちらかをやってから読んだほうが良い.できれば1からのほうがベター.不可逆反応はこれだから!

ともだちマグネット 1 (バンブーコミックス WIN SELECTION)

ともだちマグネット 1 (バンブーコミックス WIN SELECTION)


ダンガンロンパ/ゼロ(上) (星海社FICTIONS)

ダンガンロンパ/ゼロ(上) (星海社FICTIONS)


ダンガンロンパ/ゼロ(下) (星海社FICTIONS)

ダンガンロンパ/ゼロ(下) (星海社FICTIONS)