わ　た　し　よ　！　　――たなかのか『すみっこの空さん（3）』感想

　ねぐせは　ゆめのおはなしの「ドッグイア」なのかもしれない
　だからね　きっと　朝　おきた時のねぐせをつぎにねる時まで　その形のままのこせておけたら
　ゆめをつづきから見ることが　できるんじゃないかなあ…!!
　　　　――たなかのか『すみっこの空さん（3）』

　小学生×哲学漫画．哲学といってもアレルギーが出るほどの難解なものではなく，それこそ「視点を変えて，表現を替えて，考え方を換える」といったもの．すれていない，知識と経験と諦めに支配されていない目線からの言葉は，相変わらず「発見する喜び」に満ちていて非常に楽しい．

　……裏を返せば，そこに楽しさを感じるのはその言葉に影響されてこそ．香住先生の台詞と発声練習のフレーズは見事にわたし自身にぶっ刺さって痛いのだけれど．「チシキのチリの中にチッキョしていても　宇宙の秘密をチシツすることはできない」からこそ，触れたものに対してアウトプットしよう，というわずかばかりの抵抗が例えばブログだったりするのだった．

　この物語は決して誰かを救う物語でも誰かが救われる物語でもない．提示するのはあくまで無責任に放られる言葉である．ならばこの漫画を読んで得られるカタルシスは，子供が何かを発見するときの目の輝きもさることながら，何より読み手であるわたし達がそれらの言葉を受け取って解釈し自身の価値観と混ぜて現実にフィードバックしている，しようとするからじゃないだろうか．すなわち，救われるのはどのキャラクター以上にわたし達なのだろう．

　とにかく，万人にオススメできる漫画であることは確か．ちいさな「てちゅがく」は大きな「信念」へと変わり得るに違いない．